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永久パン ~ベリヤ―エフ少年空想科学小説選集~

投稿日:2008年12月 5日(金曜日) | カテゴリ:イベント情報 | コメント(0) | トラックバック(0)

みなさんは「永久パン」というSF小説をご存じでしょうか?

A・ベリヤ―エフ氏著作の永久パンは1963年、岩崎書店より「ベリヤ―エフ少年空想科学小説選集 第6巻」として発行されました。

寄付していただいた本なのですが、まさか永久パンに出会えるとは思いもよりませんでした。

はじめてじっくり読んだのですが、正直、面白いです...!小学生の時に初めて少年SF小説を読んだ時の興奮を思い出しました。(あれは、宇宙戦争だったかな...?)

しかしその内容は少年空想科学の名に相応しくない、大変に未来を示唆したリアルな内容です。

物語の主人公、ブロイエル博士は人類を飢えから救おうとする崇高な精神から「永久パン」を発明しました。

この永久パンはパンを形成するバクテリアが空気中より栄養をとり、食べても食べても無くならないという、まさに夢のようなパンだったのです。

しかしその結果は、人類の悲劇におわってしまいました。

ベリヤ―エフの作品には、こうした、たとえ人類のためになる、正しい発明や発見も、資本主義社会では、人類の不幸を招く悪魔の発明になってしまうことを物語った作品がたくさんあります。

まさにソ連のSF小説ならではの「味」を感じます。

 

以下が「永久パン」の大体のあらすじです。(webサイト 20世紀少年少女SFクラブより抜粋)


ドイツ・フリッドランド諸島のフェル島のある漁村。冬も近づいた風の冷たい秋のある日、不漁に終わった漁夫達は不機嫌に帰ってきた。島でまた網の盗難があり、リュードビッヒが、犯人はハンスではないか、と言い出す。ハンスとは、島のぶっ壊れた灯台の建物の中に一人で住んでいる、半病人の、まるで骸骨のようにやせ細った、背のひょろ長い老人である。最近むくむく太ってきており、この謎めいた肥え方は、すでに村中のうわさの種となっていた。ハンスが、漁夫達の網や魚を売り飛ばしているのではないか、と疑った漁夫達は、ハンスの家に尋問に行く。

口達者なリュードビッヒやフリッツらに責められて、ついにハンスは、ブロイエル博士に「永久パン」をもらったことを白状させられる。「永久パン」またの名を「ねり粉」は、カエルの卵のようなぶよぶよしたもので、見かけは悪いが、とてもおいしくて栄養がある。少し食べるだけで満腹になり、体中に力があふれてくる。また、一昼夜たつと二倍に増えるので、いくら食べても、種を残しておけば減らないのである。

ブロイエル博士とは、世界的に有名な生化学者である。数年前にベルリン大学を辞職して、「隠退」と称してフェル島に移り住んだのである。博士は、全人類を飢えから解放するパンの発明に一生をささげてきたのである。博士は、必要な一切の栄養を含んだ極めて単純な有機体を培養して育てようと苦心してきた。この物質は、単細胞生物のように単純分裂をして増殖する。最初は、培養に手間と費用がかかっていたが、改良を重ね、ようやく「飼育」に手数も費用もかからない単細胞生物の「品種」を育て上げたのである。すなわち、栄養を直接空気からとっている品種である。永久パンは、空気中に含まれる有機物のほこりなどから必要な栄養素をとってきて、それを自分のオルガニズムの中で作り変えて増えるのである。

村の漁夫達は、ブロイエル博士の研究所に代表団を送り込み、永久パンを分けてくれるよう交渉するが、博士は、まだ実験段階でどのような危険が現れるかもしれないから、分けてやるわけにはいかない、ハンスは実験台だ、と拒絶する。

やがて冬になり、確かにハンスはひもじくはなかったが、服も靴もボロボロで、半分こわれた家の中で寒さに凍えていた。これに目をつけた村人達が、ハンスから永久パンを買うようになり、ハンスは徐々に金持ちになっていく。永久パンは村に普及していき、やがて有名なベルリンの新聞社にすっぱ抜かれる。この記事を読んだ、大農業機械工場主のローゼンシトックは、銀行家のクリグマンと組み、永久パンで金儲けをしようと企む。ブロイエル博士が永久パンに対して特許権をとっていないことに目をつけたローゼンシトックは、村人から永久パンを買いあさり、青年化学者シュミットに分析させ、永久パンの二番煎じを作らせようとする。

村に秘書のマイヤーが派遣され、永久パンの値がつり上がる。クリグマンは永久パンを買い占めるため、村に歓楽街を作る。酒とばくちでおかしくなった村人から、どんどん永久パンを買い占めていく。そしてついに、シュミットが「永久パン」の成分を突きとめ、人工的につくりだすことに成功、「永久パン」販売輸出株式会社が活動を開始する。ブロイエル博士が抗議しても、相手にされない。「永久パン」が市場に現れたことで、物価の大変動が起こり、全世界の経済界に大動揺を与えた。これほどの強力な手段を個人の事業に握らせたのはよくないと、「永久パン」は、国家の独占事業になる。

春になって暖かくなるにつれ、永久パンの増える速度が速くなっていく。フェル島の漁村でも、村人達が種としてとっておいた永久パンが急速に増え始め、村人達を困らせる。やがて永久パンを食べるという新商売「食べ屋」まで出る始末。しかしそれも、夏になると追いつかなくなり、大洪水のように村人に襲いかかった。フリッツの提案で、永久パンを海に放り込むと、陸よりも早く増えていく。パニックに陥った村人は、ブロイエル博士に責任を押し付け、ブロイエル博士の屋敷を取り囲む。ようやく逃げ出したブロイエル博士は検事の家を訪ね、保護を申し込む。丁度博士の逮捕状が出ており、博士は起訴されてベルリンの監獄へ入れられる。

世界中で、たくさんの村や町が、永久パンの下に埋まり、海や川が永久パンで埋め尽くされていた。政府が永久パンの独占をして売っていたため、自分で自分を起訴するわけにはいかず、博士に罪をなすりつけ、注意を引きつけようとしていたのである。博士は、実験の途中で永久パンを労漁夫ハンスに与えるという犯罪的軽率さを犯したという理由で起訴された。博士は、監獄内に作られた実験室に移され、永久パン絶滅の手段を研究させられる。助手として派遣されたのは、青年化学者シュミット。政府は、犠牲者は一人だけで十分と思ったのか、彼やローゼンシトックやクリーグマンにはお咎めなしだそうである。ローゼンシトックやクリーグマンは、永久パンを物理的に絶滅するための機械を作って、それで大変もうけているという。今では、たくさんの労働者が永久パン退治のために働き、世界中どこでも労働時間は12時間に延長されているそうである。

ブロイエル博士は、以前から行なってきた永久パンが増えるより早く永久パンを食い尽くすバクテリアの細菌群の研究を再開し、シュミットは、永久パンが空気中からとっている栄養を殺菌する研究を開始し、二つの方向から研究を開始し、やがて二つの研究はほぼ同時に完成する。

世界は永久パンから解放された。人類は救われた。

フェル島の漁村では、永久パンの恐怖から開放された漁夫達が、悪夢からさめたように、しばらく忘れていた海に出かけて、生活の糧をかちとるために、荒海に向かって勇ましく船出していく。

 

(書評:偉大な発明の結末はいつも......。

 

もし、図書館にベリヤ―エフ少年空想科学小説選集があったら読んでみることをお勧めいたします。

思想的なこと抜きにして、大変楽しめるし勉強にもなる内容だと思います。

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